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日本型「接触確認アプリ」はプライバシーを保護してくれるの?

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの藤田卓仙です。

前回の記事では、日本で導入する「接触確認アプリ」の特徴についてお伝えしました。今回は、「プライバシー保護の仕組み」についてお伝えします。

 内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策テックチームでは、「接触確認アプリに関する有識者検討会合」を5月9日から開いており、私はそのメンバーでもあります。ただし、ここでの説明はあくまで個人の立場からのものであり、公式の見解ではありません。 

日本型「接触確認アプリ」は、位置情報を使うの?

いいえ、日本型「接触確認アプリ」では、人々のプライバシーを保護するため、スマートフォンの位置情報を使わないことになりました。

その代わり、Bluetooth(ブルートゥース)という近距離無線の機能を使います。これは、たとえば、スマートフォンとイヤホンやスピーカーとの間で、音声を無線でやりとりするときに使われている機能です。

インドやイスラエルでは、スマートフォンの位置情報を用いて感染者と接触した人を保健当局が直接特定できる仕組みを導入しています。それに対し、シンガポールでは、Bluetoothを用いて接触を確認する方法が用いられています(TraceTogether)。

日本型「接触確認アプリ」は、店などへの入退場時にQRコードを読むの?

いいえ、日本で導入する「接触確認アプリ」は、可能な限りスマートフォンから個人情報が出ないようにするため、QRコードの読み取りをせず、位置情報も用いません

しかし、海外では、店などへの入退場時にスマートフォンからQRコードを読み込んでもらい、位置情報を使って、どの場所を訪れたのかわかるようにする取り組みが進んでいます。例えば、シンガポールでは、SafeEntryというアプリを用いて、職場やスーパーマーケットの入退場時にQRコードを読み込ませ、位置情報を使ってどの場所を訪れたのかがわかるように、記録を取ることを義務化しています。
大阪や神奈川では、こうした取り組みが提案されています。

日本型「接触確認アプリ」は、国から個人のプライバシーを守れる?

はい、できるだけ個人のプライバシーを守る仕組みになる予定です。
スマートフォンの基本的なソフトウェアを提供しているAppleとGoogleは、プライバシー侵害のリスクをなるべく減らせるような、アプリとプログラムをつなぐ仕組み(API)を開発しました。AppleとGoogleが開発したAPIは、各国の政府か保健行政機関のみに提供され、提供先は各国1機関に限定されています。

日本では、このAPIを利用した「接触確認アプリ」を、厚生労働省が開発・運用することとなりました。そのため、人々のプライバシーを国から保護するための検討がなされています。 

多くのアプリは、スマートフォンに蓄積される様々な個人情報の利用を可能にする設定があり、個人情報を利用されたくないときは、利用者がオフにしなければなりません。しかし、日本で開発中の「接触確認アプリ」は、アプリが政府に個人情報を送らないようにするため、個人情報を取得できない設計になります。つまり、名前、性別、住所、生年月日、位置情報、電話番号、メールアドレス等の個人情報が「接触確認アプリ」とつながることはありません。 

また、万が一、本来とは違う目的で情報が使われたり、他に情報が漏れたりしないよう、政府の検討会では、プライバシーやセキュリティに関する取り決めをまとめました。

日本型「接触確認アプリ」の弱点は?

多くの人々が日頃からこの「接触確認アプリ」を使っていないと、スマートフォンに「新型コロナの感染者と接触した」という記録が残らないので、接触した人にも通知されません。海外の例をみると、この「接触確認アプリ」は、国民の6割以上が使わないと効果が十分に発揮できないようです。

他方で、使用に慣れない人々への対応も重要です。スマートフォンを利用しない人々や「接触確認アプリ」を使用しない人々への不利益が生じない配慮も必要です。

接触確認アプリ後編

最後に

日本型「接触確認アプリ」は、プライバシー保護にしっかり配慮しています。その代わりに、アプリの普及は人々の自由意思に頼り、感染拡大防止に関しては、アプリから通知を受けた一人一人の行動に頼る設計です。多くの人々にこのアプリを使うことの意義を感じてもらい、納得してもらわないといけません。そのためにも、国は、しっかりと市民に説明し、透明な運用を行う必要があります。詐欺目的のニセモノのアプリによる被害も食い止めなければなりません。

さらに、今後、再流行が起きたときに、「接触確認アプリ」だけでどこまで感染防止に役立つのか、継続的に検証すべきです。QRコードによる入退場管理や、位置情報を利用した追跡のように、プライバシーのリスクがより高い対策も、場合によっては必要になるかもしれません。

可能な限り経済活動や移動の自由を妨げずに、適切な感染症対策を取り入れた生活のあり方について、いまから一緒に考えていきましょう。

より詳しく知りたい方へ

コロナ専門家有志の会「濃厚接触者の定義から私たちが学ぶこと」(4月22日)
第1回 接触確認アプリに関する有識者検討会合 (5月9日)
第2回 接触確認アプリに関する有識者検討会合 (5月17日)
接触確認アプリ及び関連システム仕様書(5月26日)
「接触確認アプリ及び関連システム仕様書」に対するプライバシー及びセキュリティ上の評価及びシステム運用留意事項(5月26日)
羽深宏樹「日本版コロナ接触確認アプリのポイント」(5月27日)
クラスター対策に関する詳しい情報は新型コロナクラスター対策専門家( @ClusterJapan) へ。
感染拡大を防ぐために役立つ動画をはじめ、政府や自治体による助成金・支援金制度の詳しい情報は内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブサイト へ。

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