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日本型「接触確認アプリ」ってどんなもの?

はじめまして、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの藤田卓仙です。

5月25日、安倍首相が緊急事態宣言の解除を表明されたとき、新型コロナの「接触確認アプリ」の導入について触れられていました。

日本型の「接触確認アプリ」とは、どのようなものでしょうか? この記事では、「接触確認アプリ」について、諸外国の状況や、私も参加している政府の検討会で議論してきた内容をお伝えします。

※ 内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策テックチームは、「接触確認アプリに関する有識者検討会合」を5月9日から開いており、私はそのメンバーでもあります。ただし、ここでの説明はあくまで個人の立場からのものであり、公式の見解ではありません。

そもそも接触確認アプリって何?

新型コロナの感染拡大防止策として、シンガポールなど海外では、スマートフォンなどを活用した「アプリケーション」が使われています。感染者や、感染者との接触者の行動を追跡するためです。感染者との接触(contact)を追跡(trace)するので、海外では、「コンタクト・トレーシングアプリ」と呼ばれています。ただし、日本型では、個人の行動を「追跡」する仕組みはとらないため、「接触確認アプリ」と呼ぶことになりました。

再度の感染拡大を防ぐため、今後は、クラスター対策を一層強化し、感染者をできるだけ早期に発見する必要があります。そのため、「接触確認アプリ」を普及させ、新型コロナ陽性と判明した人と一定時間近くにいた人、すなわち「濃厚接触」の可能性が高いみなさんに自動的に通知することで、早期の対策につなげる政策が始まろうとしています。
アプリが検知するのは、「概ね1m以内の距離で継続して15分以上の近接状態」にあったかどうかです。

日本の接触確認アプリは、何の目的に使うの?

海外では、既に「接触確認アプリ」の導入が進んでいます。海外での使用目的は、大きく3つに分かれます。  

①お知らせを受けた人が、自らの行動を変えて感染拡大を防止するため
②保健所(公衆衛生当局)が濃厚接触者を把握するため
③人との接触度が多い人に対して、施設や地域への立ち入りを制限したり、感染者を隔離したりするため

それでは、日本での使用目的はどうすべきでしょうか? 政府の検討会では、①の「お知らせを受けた人が自らの行動を変えて感染拡大を防止する」ことを主な目的として、「接触確認アプリ」を導入することになりました。

さらに、②の「保健所(公衆衛生当局)が濃厚接触者を把握する」目的も重要です。そこで、「接触確認アプリ」と厚生労働省が整備している感染者情報の管理システムを連動させ、アプリの利用者が濃厚接触者になった場合に、保健所の方から連絡を取りやすくする予定です。

日本型「接触確認アプリ」の仕組みは?

「接触確認アプリ」が完成したら、利用者が自分のスマートフォンにインストールして利用できます。スマートフォンを身に着けて持ち歩くと、お互いの個人情報を使うことなく、他の人と接触した記録がアプリに蓄積されます。
一定期間の間に接触した人の感染が確認され、保健所で登録されると、その人と接触した記録のある人のスマートフォンに、対応方法についてのお知らせが届きます

接触確認アプリ図

(出典:接触確認アプリ及び関連システム仕様書 5月26日付)

最後に

日本では、6月以降に本格的にアプリが導入される予定です。この日本型「接触確認アプリ」の利点をまとめると、次の通りです。

・日常生活で、どれくらい他人と接触をしたかの変化を意識できる
・お互いに、誰とどこで接触があったのかはわからないよう、自分が感染者と接触した情報について、アプリから通知を受けられる
・アプリから通知を受けた感染者や濃厚接触者が、健康管理や感染拡大防止のために必要な行動を取ることができ、相談などのサポートが受けやすくなる

接触確認アプリ前編

しかし、これらのアプリをどのように普及させるか、詐欺目的のアプリをどう回避するかなど、まだ課題は残っています。今後、詳細が決まったら、またお伝えします。

また、アプリのプライバシー保護の問題について、気になる方もいらっしゃると思います。この点については、次回の記事で、お伝えします。

より詳しく知りたい方へ

コロナ専門家有志の会「濃厚接触者の定義から私たちが学ぶこと」(4月22日)
第1回 接触確認アプリに関する有識者検討会合 (5月9日)
第2回 接触確認アプリに関する有識者検討会合 (5月17日)
接触確認アプリ及び関連システム仕様書(5月26日)
「接触確認アプリ及び関連システム仕様書」に対するプライバシー及びセキュリティ上の評価及びシステム運用留意事項(5月26日)
羽深宏樹「日本版コロナ接触確認アプリのポイント」(5月27日)
クラスター対策に関する詳しい情報は新型コロナクラスター対策専門家( @ClusterJapan) へ。
感染拡大を防ぐために役立つ動画をはじめ、政府や自治体による助成金・支援金制度の詳しい情報は内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブサイト へ。

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