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新型コロナの感染状況の調査はどうなっているの?

前回の記事では、「抗体」の意味と課題について、お伝えしました。今回は、「抗体保有率」の落とし穴、「抗体検査キット」の性能の課題をお伝えします。

国内の感染状況を確かめるための「抗体検査」

新型コロナは、感染していても、自覚症状のない人がたくさんいます。そのため、どのくらいの人が感染したのかを知ることが難しいのです。どの国でも、正確に把握していません。

そこで、「抗体検査」を用いて、「どのくらいの人が既に感染したか」を推測する調査が、海外や日本で始まっています。

「抗体保有率 %」に一喜一憂しないで

国内で実施された「抗体検査」の調査が報道され、「抗体保有率 〇%」という数字を目にすることが増えてきました。しかし、「抗体保有率 ◯%」という結果を見て、すぐに「日本全体」や「地域全体」にあてはめてはいけません。
なぜなら、調査で対象になった人々の特徴や、調査で使用した「抗体検査」の種類などが異なっているからです。
たとえば、①~③のグループでは、健康状態や、行動パターンが異なり、抗体保有率にも偏り(バイアス)が生じます。調査結果を理解するには、注意が必要です。
① 病院を受診した患者さん
② 献血に協力した人
③ 健康管理アプリをインストールした人

また、「抗体検査」の方法そのものにも限界があります。過去に感染していたとしても、確実に「抗体」が見つかるとは限りません。逆に、感染していない人に誤って「抗体あり」という結果を出すことも、ありえます。誤った結果が出る確率は、抗体を調べる方法や使用したキットによっても異なります。 

「抗体検査キット」の性能はどうなっているの?

日本では、献血の検査で残った血液を使って、販売されている「抗体検査キット」の正確さを確かめる研究が始まりました *。その最初の報告として、複数のメーカーの「抗体検査キット」の性能を比較した結果が発表されました(厚生労働省 5月15日付資料 )。同じ人の血液でも、検査キットによって異なる結果が出たり、1年前の保存血液に対して「抗体がある」という結果を出した検査キットもあったようです。今後、使用する「抗体検査キット」を厳密に検討しながら、対象人数を拡大した調査が行われる予定です。 

<注意>
*「検査キットの性能を調べる研究」です。献血に行き、研究に協力したとしても、「抗体検査」の結果は、本人には知らされません。自分が「新型コロナの抗体」を持つかを知るために献血に行くことは、本来の献血の目的とは異なりますので、控えましょう。

抗体検査第二弾まとめ図_0519

最後に

これからも「新型コロナの抗体検査」や「抗体保有率」については、様々な数字が公表され、報道されるでしょう。でも、一喜一憂しないでください。今後も、様々な調査が積み重なることで、少しずつ、日本全体の感染状況が推測できるようになるでしょう。

どのような検査を、どのタイミングで組み合わせて使うか。そして、どのように医療や公衆衛生の現場へ導入していくか。検査を普及させるまえに、まずは、こうした点をしっかり検討する必要があります。今後も検討が続くので、落ち着いて、待ちましょう。

<参考>
■国立感染症研究所「迅速簡易検出法(イムノクロマト法)による血中抗SARS-CoV-2抗体の評価」(4月1日付)
■日本臨床検査医学会「COVID-19 における抗体検査についての基本的な考え方」(4月17日付)
■⽇本感染症学会「抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット4種の性能に関する予備的検討」(4月17日付)
■日本医師会 COVID-19有識者会議「COVID-19感染制御における抗体検査の開発について」(5月4日付) 
■新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会「参考資料」(5月15日付)
新型コロナの陰性証明はできません!(4月29日付 有志の会note記事)

もっと知りたい人へ:抗体検査と抗原検査の違いは?

どちらの検査も、ヒトの免疫の仕組みを利用しています。
ヒトは、体内に「異物(ウイルスや細菌など)」が入ると、体を守るために「抗体」という物質を作ります。「異物」は、それぞれに「目印」を持っています。この「目印」を、「抗原」と呼びます。抗原に、抗体が結合することで、異物が排除されるのです。

「抗体検査」は、血液をとって、「抗体」の有無を調べます
。感染後、抗体が生成されるまで時間がかかるので、早期診断には向いていません。しかし、「全体で、どのくらいの方が新型コロナに感染している/いたか」を知る手がかりとして期待されています。ワクチンの効果を評価する際にも、有用です。

それに対して、抗原検査は、鼻腔ぬぐい液をとって、「抗原」の有無を調べます。ウイルスや細菌そのものを検出するので、早期診断にも応用可能です。 
クラスター対策に関する詳しい情報は新型コロナクラスター対策専門家( @ClusterJapan) へ。
感染拡大を防ぐために役立つ動画をはじめ、政府や自治体による助成金・支援金制度の詳しい情報は内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブサイト へ。