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新型コロナの「抗体」を調べる意義とは?

最近よく耳にする「抗体」って、何でしょうか? 感染症の「抗体」を調べる意義とその課題についてお伝えします。

「抗体」とは?

「抗体」は、体内に入りこんだウイルスなどから体を守るために、体内で作られる物質のことです。一度感染すると、体内に「抗体」が長く残ることがあります。様々な感染症の調査で、過去に感染したかどうかを教えてくれるサインとしても、利用されています。
しかし、「新型コロナの抗体」を調べる標準的な手法はまだ確立されていません。

感染症の「抗体」を調べることは、何に役立つの?

ある感染症の抗体を調べることには、次の二つの意義があります。
①感染したことの証明
②予防する免疫の有無の確認

①については、感染や症状が出てすぐには「抗体あり」とならないことも多いです。そこで、症状が出てから時間を置いたり、期間をあけて再度検査をする必要があります。

②も、簡単にできるわけではありません。
実は、感染症にかかったあとには たくさんの種類の抗体ができます。
しかし、感染症の予防に働くものもあれば、予防に直接関係ないものもあります。よって、どの「抗体」を調べているのかがわからないと、「予防する免疫」の有無も判断できないことになります。

「抗体」を持つことと、予防接種の関係は?

生まれて間もない赤ちゃんから乳幼児期までは、感染症に対する免疫力が強くありません。そのため、予防接種を通じて「抗体」を持たせ、免疫を作り、感染症にかかりにくくすることが大切です *

しかし、大人になると、自然に感染して獲得した「抗体」を持つこともあれば、予防接種で獲得した「抗体」が残っていないこともあります。そのため、血液をとって、ワクチンで予防できる感染症(麻疹(はしか)、風疹など)の「抗体検査」を行い、その結果をもとにワクチンを接種することがあります。  

<注意>
日本小児科学会は、乳幼児健診や予防接種を遅らせないようにしてほしいと呼び掛けています。
「新型コロナの予防のために」と乳幼児健診や予防接種を制限をすると、他の重要な病気の危険性にさらされるからです。乳幼児健診や予防接種は、決められた月齢・年齢できちんと受けることが重要です。なお、地域によって実施方法を変更していることがありますので、お住まいの地域の保健所や保健センターに確認してください。
「新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて」5月1日付) 

新型コロナの「抗体」について

では、新型コロナの「抗体」はどうでしょうか。これまでの感染症の常識から考えれば、新型コロナの「抗体」があれば、一定の間、新型コロナに感染しない可能性があるかもしれません。

しかし、新型コロナの「抗体」を持っていれば、本当に再感染しないかどうかは、まだわかっていないのです。「抗体」がどれくらい長持ちするかも明らかになっていません

皆さんも、「自分が新型コロナの抗体を持っているか」調べてみたいかもしれません。でも、現時点では「抗体」の有無を、何かの証明に使うことは難しいのです

国が承認した「抗体検査キット」はあるの?

日本では、今のところ、国から正式な承認を受けた抗体検査キットはありません
現在、研究用に開発された「抗体検査キット」が、複数のメーカーから販売されています。しかし、メーカーによって、その正確さに違いがあることがわかっています。ですので、まだ、医療や公衆衛生の現場で普及できる水準には達していないと考えられます。

抗体検査第一弾まとめ図_0519

最後に

「抗体検査キット」の結果だけで、何らかの判断をすることには危険を伴います
これまで国が承認した、ほかの感染症の「抗体検査キット」でも、常に100%正しい結果が判明するわけではありません。過去に感染していたとしても、確実に「抗体」が見つかるとは限りません。逆に、感染していない人に誤って「抗体あり」という結果を出すことも、ありえます。そのため、医師は、「抗体検査キット」の限界を補うため、ほかの様々な情報と合わせて診療をしてきました。

どのような検査を、どのタイミングで組み合わせて使うか。そして、どのように医療や公衆衛生の現場へ導入していくか。検査を普及するまえに、まずは、こうした点をしっかり検討する必要があります。今後も検討が続くので、落ち着いて、待ちましょう。

次回の記事では、もうすこし詳しく、国内の感染状況の調査や「抗体検査キット」の開発の現状を、お伝えします。

<参考>
■国立感染症研究所「迅速簡易検出法(イムノクロマト法)による血中抗SARS-CoV-2抗体の評価」(4月1日付)
■日本臨床検査医学会「COVID-19 における抗体検査についての基本的な考え方」(4月17日付)
■⽇本感染症学会「抗新型コロナウイルス抗体の検出を原理とする検査キット4種の性能に関する予備的検討」(4月17日付)
■日本医師会 COVID-19有識者会議「COVID-19感染制御における抗体検査の開発について」(5月4日付) 
■新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会「参考資料」(5月15日付)
新型コロナの陰性証明はできません!(4月29日付 有志の会note記事)
クラスター対策に関する詳しい情報は新型コロナクラスター対策専門家( @ClusterJapan) へ。
感染拡大を防ぐために役立つ動画をはじめ、政府や自治体による助成金・支援金制度の詳しい情報は内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブサイト へ。
コロナ収束のための拡散を!
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政府対策本部の専門家会議や厚労省クラスター対策班等の関係者で組織された専門家の有志の会です。全世代のみなさまに拡散してほしいメッセージをお知らせしています。一人でも多くの方に私たちのメッセージが伝わり「秒で理解、秒で拡散」されるよう努めます。ともに困難を乗り越えましょう。

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