新型コロナの病原性とワクチン:変異株の影響は?
有志の会の河岡です。
12/30付note記事「新型コロナウイルスの「変異」とは? 」では、「変異」の意味や、感染力や病原性について、お伝えしました。
今回は、新型コロナの病原性とワクチンの効果について、変異株が与える影響も含め、いまわかっていることをお伝えします。
Q. 新型コロナウイルスの病原性は強くなっていますか?
最近、重症化する患者が増えており、ウイルスの病原性(※1)が強くなっているのではないかというご心配があるようです。
※1 病原性とは、病気を引き起こす能力のことです。
このウイルスは中国の武漢で、おそらくはコウモリから人に伝播したのが発端です(コウモリから人に伝播する過程で、別の動物が関与していたかどうかは不明です)。その後、ウイルスは中国全土、ならびに世界中に広がりました。
ヨーロッパ諸国やアメリカでは多くの人が感染し、亡くなっています。しかし、感染者数や死亡者数だけで、ウイルスの病原性が強くなっている(強毒化している)あるいは感染性が高まっているとは言えません。
なぜなら、感染者数や死亡者数は、それぞれの国・地域の流行対策や高齢者の割合(新型コロナウイルスは高齢者の死亡率が高い)に影響されるからです。
しかし、イギリスで従来流行していた株に取って代わりつつある変異株は、病原性が強くなっているかもしれない、と報告されています。今後、詳細な解析が必要です。
Q. 海外で接種が始まったワクチンの有効性と安全性は?
海外では、いくつかのワクチンが緊急使用承認されて接種が始まっています。なかでもmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは高い効果(約95%)が示されています。
ただし、ワクチンを打ったからといって、ウイルスに感染しなくなるわけではなく、ワクチンを接種をした人の約95%の方の発症を予防することができるということです。ウイルスは体の中で増える可能性があり、発症しなくても周りの人に感染させる可能性もあります。
したがって、多くの人がワクチンの接種を受けるまでは、ワクチンを接種してもマスクをして、万が一感染しても、他の人にウイルスをうつさないようにする必要があります。
mRNAワクチンの接種後の副反応としては、接種部位の痛みや発熱などが報告されていますが、数日で回復する軽度な副反応がほとんどです。しかし、まれに、「アナフィラキシー(※2)ショック」を起こすことが報告されています。
※2 「アナフィラキシー」とは、短い時間のうちに、複数の臓器(皮ふ、呼吸器、消化器など)や全身にあらわれる、アレルギー症状のことです。そのなかでも、血圧が低下する、意識レベルが下がるなど、生命にかかわる重症の場合を、「アナフィラキシーショック」といいます。
新型コロナに限らず、季節性インフルエンザのワクチンをはじめ、どのような予防接種でも、副反応やアナフィラキシーの症状が出ることがあります。できるだけ早く気づいて、対応することで、重症化を防ぐことにつながります。
例えば、ファイザー社のmRNAワクチンのアナフィラキシーショックは、接種した約189万3,360人のうち、21人で確認されていますが、頻度は非常に低く、すぐに対応できたため、調査中の1名を除き、20名が回復したとの報告があります (米国疾病予防管理センター(CDC) 1月15日)。
ワクチンを接種する場所では、かならず、アナフィラキシーショックが起きてもすぐに対応できる体制を整えるようにしています。
Q. 変異株は、ワクチンの効果に影響しますか?
イギリスや南アフリカ、ブラジルで、新型コロナウイルスの変異株が報告されています。現在、開発中のワクチンや接種が開始されて間もないワクチンの有効性に対して、これらの変異株がどう影響するかが心配されています。
イギリスの変異株に対しては、効果が弱くなる可能性は低いと考えられています。ただし、南アフリカやブラジル変異株は、現在開発中のワクチンの有効性が低くなる可能性があるかもしれないという結果が報告されていますが、 効果が全くなくなるわけではないです。
今後、もし、変異株が、これまで流行してきた株に置き換わってしまう可能性が高くなってくれば、変異株用のワクチンを作る必要が出てくるかもしれません。
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