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国が承認した「抗原検査」ってどんなもの?

変更履歴:図表の更新、<注意:新型コロナの「診断」について>を追加(2020年5月14日 23:52)

2020年5月13日付で、国が検査会社1社の新型コロナ「抗原検査」を製造販売承認し、同日に保険適応されました。では、抗原検査は、どんなときに活躍するのでしょうか。この記事では、PCR検査との違いや、活用が期待される場面をお伝えします。

抗原検査とPCR検査はどう違うの?

抗原検査_0514修正

参考1:厚生労働省 抗原検査の活用に関するガイドライン(5月13日付・自治体向け事務通知別添資料)、厚生労働省医薬・生活衛生局 5月13日付 「新型コロナウイルス感染症診断薬の承認について」
参考2:神奈川県医師会 5月12日付「 PCR検査の特性と限界」 
参考3: Fang, Y. et al. Radiology. 2020 Feb 

抗原検査は、「いま感染しているかどうか」を調べることに役立ちます。
インフルエンザの簡易診断キットのようなイメージです。

PCR検査と比べたメリットは、検体を解析施設に送る必要がなく、医療従事者がその場で検体を採取し、30分程度で結果がわかる点です。
また、本当は感染していないのに誤って陽性という結果が出てしまう人の割合は、PCR検査と同程度です。そのため、抗原検査の結果が「陽性」だったら、新型コロナと診断できます*

<注意:新型コロナの「診断」について>(5月14日追記)
* 診断は、抗原検査の結果のみで決まるのではなく、他の症状と合わせ、医師が総合的に判断します。検査は、医師が必要性を認めたときに行います(厚生労働省のガイドライン参照)。
検査を多くの方に提供するには、いくつか課題があります。検査キットは開発されたばかりのため、適切な運用法を現場で確かめなければなりません。現段階では検査キットの生産や供給に限りがあります。③検査を受ける人が多くなるほど、感染していないのに誤って陽性となる人偽陽性も増えてしまいます。よって、どこまで対象者を広げるかは、生産・供給の拡充度合いや、メリット・デメリットを、慎重に判断することが必要です。

しかし、デメリットもあります。PCR検査と比べると、本当は感染しているのに陰性という結果が出る人の割合は高いです。そのため、抗原検査で「陰性」という結果が出た場合、そのまま信じることはできず、現時点ではPCR検査も行う必要があります。
また、鼻の奥から検体を取るので、医療従事者への感染リスクはPCR検査と変わりません。ただし、将来的には、より感染のリスクが低い唾液を検体に使うことも考えられています。

当面は試行段階ですが、PCR検査とセットで普及していくと思われます。

<現時点での抗原検査のまとめ>
・ PCR検査よりも短時間で結果がわかる
・「陽性」ならば、新型コロナと診断できる
・「陰性」の場合は、PCR検査で確かめる必要がある

抗原検査はどんな場面で使われるの?

厚生労働省の抗原検査の活用に関するガイドライン5月13日付・自治体向け事務通知別添資料)によれば、次のような場面で使うことが期待されています。

① 症状のある患者さんの早期診断・治療につなげる
帰国者・接触者外来や医療機関などで、新型コロナが疑われる患者さんに対し、医師が判断して検査を実施します。
なお、症状がない方は排出するウイルス量が少なく、正確に検出できないため、現時点で検査することは推奨されません

② 院内・施設内での感染拡大の防止につなげる
医療機関や施設などでクラスターが発生した際に、感染が疑われる方などに検査を実施します。

検査キットの生産や供給には時間がかかります。まずはより緊急性の高い地域や医療機関から導入し、段階的に拡大を進めていく予定です。

また、検査キットの性能を評価するためには、今後も研究を続ける必要があります。

最後に

検査についてもっと知りたい方は、日本臨床検査医学会「一般の方、非医療者の方へ 臨床検査の偽陽性と偽陰性について」(4月27日付)をご覧ください。「検査は100%ではないこと」について、わかりやすく解説しています。

検査だけではなく、同時並行で、治療薬やワクチンの研究開発も必要です。ただ、研究には時間がかかります。みなさんには、各自、感染拡大防止対策をしながら、開発を見守っていただきたいと思います。

クラスター対策に関する詳しい情報は新型コロナクラスター対策専門家( @ClusterJapan) へ。
感染拡大を防ぐために役立つ動画をはじめ、政府や自治体による助成金・支援金制度の詳しい情報は内閣官房「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブサイト へ。

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