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新型コロナのワクチン開発の現状と、接種の考え方

新型コロナウイルス感染症のワクチン開発について、関心がある方も多いのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症対策分科会では、ワクチン接種の考え方について議論が始まりました。この記事では、第6回(2020年8月21日)の分科会で議論された主な内容について、お伝えします。

ワクチン開発の現状について

ワクチンは、ある病原体やウイルス(あるいはその遺伝情報)を使ってつくられます。予防のためにワクチンを接種することによって、体内でその病原体やウイルスに対する抗体をつくりだし、感染に備えるのです。
現在、日本国内だけでなく世界中の企業が、新型コロナのワクチン開発を進めています。従来の製法に加えて、遺伝子組み換えなどの革新的な技術を使うなど、さまざまな方法が使われています。

しかしながら、現時点で、どのような性能をもったワクチンが、いつ頃に完成するかはわかっていません
また、大切なことは、ワクチンの接種後に副反応が生じることがあり、副反応をなくすことは難しいという事実です。たとえば、比較的軽い副反応が多くの人に起きる場合や、深刻な健康被害がごく一部の人に起きる場合などが考えられます。ワクチンによって獲得できた抗体が、身体を守らずに、悪い作用を及ぼし、重症化をひきおこす現象(抗体依存性感染増強(ADE))が起きることもあります。
それでも、今このタイミングでなければ、完成時に日本の住民向けの供給数を確保できないと考えられるため、日本政府は複数の企業と交渉をしているところです。

ワクチンの効果は?

一般的に、ワクチンの接種には、以下の3つの効果が期待されます。 

① 発症を予防する
② 重症化を防ぐ
③ 感染しない

このうち、ワクチンに、接種した人が「①発症するのを予防する効果があるかどうか」「②重症化を防ぐ効果があるかどうか」については、臨床試験で確認することが可能です。 しかしながら、「③接種した人が感染しない」という効果については、客観的に証明することが難しいうえ、新型コロナの場合にはそもそも無症状の方も多いため、さらに証明が困難です。

どのような人に投与すべき? 

仮に、新型コロナのワクチンが、副反応のリスクよりも、重症化を防ぐ効果のほうが上回ると判断されたとしましょう。その場合でも、希望する人が全員接種できる量が入手できるかはわかりません。そのため、優先的に接種すべき対象の議論が開始されました。

日本の新型コロナの対策は、感染拡大防止と重症化防止を目指してきました。また、新型コロナで開発されるワクチンは、発症を予防する効果ではなく、重症化を防ぐ効果をもったワクチンになる可能性があります。

そのうえで、現時点の考えでは、高齢者と基礎疾患のある方新型コロナウイルス感染症の診療を直接行う医療従事者が優先すべき対象と考えられています。また、救急隊員、積極的疫学調査に携わる保健所の職員、高齢者と基礎疾患のある方が集団で居住する施設の職員の方なども対象として検討されています。妊婦の方を含めるかどうかも、検討課題となっています。

しかし、接種を優先すべき対象者の方にとって、有効性よりもリスクが大きいと判断された場合には、接種を拒否する権利も十分に考慮する必要があります。また、接種した方に健康被害が生じた場合の救済措置についても、その被害認定の方法を含めて、考えなければなりません。

みなさんはどのように考えますか?

ワクチンについての考え方は人それぞれです。健康面に不安のある方や感染リスクの高い環境で働いている方にとっては、期待の高いものかもしれません。しかし、過去にほかのワクチンによる副反応を経験した方にとっては、接種を避けたいと思われるかもしれません。また、新型コロナウイルスのワクチンが、本人の意思に反して接種されるような事態があってはなりません。

今後、ワクチンの開発状況を見据えながら、国内での提供体制が確立されていきます。しかし、多くの方々の意見を取り入れながら進む必要があると考えています。ぜひ身近な方々と意見交換をしてみてください。

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